ヒト肝細胞キメラマウス再生医療，創薬などの動物モデルとして有用様々な病態モデルの開発にも期待

摘要

組織の再生力を利用して，損傷組織の治療を行なう新しい医療技術が注目されている．生体組織は，分化細胞と未分化細胞によって構成されている．前者は，組織の構造形成と機能の発現に寄与している．後者は，前者に比べてその数が著しく少なく，組織の特殊な部位（ニッチ）に存在し，分裂せず静止期（G_0）に留まっているが，組織が損傷すると，分裂を開始し，失われた細胞を補給する．このような細胞は組織幹細胞と呼ばれている．筆者らは，肝臓の再生に関する研究を行なっている．肝臓は，終生，高い再生能力を有する器官として知られているが，その実質組織を構成する肝細胞の細胞周期時間がおよそ1年と長いため，その幹細胞（肝臓幹細胞）の性質に関しては不明なことが多い．幹細胞の性質を調べるためには，これを増殖させ分化させるための実験系が必要である．そのような実験系として，哀れめ0およびin vitroの2つの実験系がある．前者ほ，生体組織に傷害を与え，目的とする細胞を適当な方法で標識後，その組織に移植し，増殖分化させるものである．後者は，生体外に分離し，これを培養し，増殖分化させるものである．通常は，この2つの方法を併用して，組織幹細胞の性質に関する情報を得ている．本稿では，ヒト肝細胞をin vivoで増殖分化させる方法を紹介する．