酵母に発見した“アセチル化酵素Mpr1”による新しい抗酸化メカニズム: 活性酵素種の生成に関わる物質を基質とした酸化ストレス防御システム？！

摘要

スーパーオキシド（O_2~-），過酸化水素（H_2O_2），ヒドロキシラジカル（HO）などの活性酸素種（reactive oxygen species：ROS）は，さまざまな原因（放射線，紫外線，酸素呼吸，酸化剤，抗ガン剤，重金属，一酸化窒素など）により細胞内に生成する．通常の細胞には，ROSを消去する抗酸化酵素としてスーパーオキシドジスムクーゼ，グルタチオンベルオキシダーゼ，カタラユゼなどが存在するが，ROSがこれらの酵素で十分処理されず，DNA，タンパク質，脂質などか損傷を受け，組織障害や細胞死をひき起こす状態が酸化ストレスである．筆者らは，実験室酵母を用いて酸化ストレスを含む種々のストレス耐性機構を解析し，その知見を実用酵母の育種に応用することを目的に研究を進めている．最近，酵母に発見したアセチル化酵素Mpr1が，既知の抗酸化酵素とは異なるメカニズムにより細胞を酸化ストレスから防御しているというモデルを提唱した．