温州萎縮ウイルスおよびその近縁ウイルスに関する分類学的研究

摘要

温州萎縮ウイルス（Satsuma dwarf virus, SDV）は我が国のカンキツに深刻な被害を与えている重要なウイルスである。 本ウイルスは日本に広く分布しているほか，中国，韓国，トルコで発生が確認されている，SDVは発見以来その重要性のため，多くの研究がなされてきたが，分類学的研究に関して，次のような重要な2つの課題が未解決であった。 すなわち，第1に，SDVはその生物学的性状，粒子形状，細胞内所見および理イヒ学的性状よらコモウイルス科のコモウイルス属，ファベウイルス属あるいはネボウイルス属に近縁であることが示唆されていたが，その正式屯分類学的位置は確定していなかった。 第2はSDVと近縁ウイルスとの関係についてである，我が国のカンキツではSDVに加えて，これまでにカンキツモザイクウイルス（Citrus mosaic virus, CiMV），ネーブル斑葉モザイクウイルス（Navel orange infectious mottling virus, NIMV），およびナツカン萎縮ウイルス（Natsudaidai dwarf virus, NDV）の3種のウイルス－が報告されている。これらは検定植物の反応よら，SDVの近縁ウイルスとされてきたが，SDVの系統とするべきか，近縁な別種のウイルスとすべきかについての根拠が曖昧であった，また，近年になって，典型的なSDVとは性状の異屯る分離株が多く見いださ挽　 これら巷SDVまたは近縁ウイルスの中のどのウイルスの系統とすべきか，または別種のウイ－ルスヰこずべきかの明確な分類基準がなく，混乱をきたしていた。