採卵鶏における飼料用米あるいは 米関連資材の給与による 鶏卵への影響

摘要

わが国における鶏卵の1人あたりの消費は年間約330個であり、メキシコ、マレーシアに次 いで世界第3位となっている。中でも生食をし ている国は珍しく、常温流通が一般的な国が 多い中、わが国では冷蔵流通が行われており、 賞味期限表示も食品衛生法によって厳格に行 われている。現在示されている賞味期限は「生 で食することのできる期限」とされており保管温 度に依存した細菌の急激な増殖が起こる日数 から求められている。もちろh鶏卵の食するこ とのできる期間は加熱することによって延長さ れる。しかし小売店では鶏卵はあくまで「生鮮 食品」であり、賞味期限（つまり美味しく食する ことのできる期限）という考え方も含めたうえで 設定していることが多く、一般的には冷蔵保存 で2週間以内であることが多い。一方、2008 年頃に起こったバイオエタノールの生産により1 ブッシェルあたり2、3ドルであったトウモロコシ 価格が7.5ドルにまで上昇したことに加えて、為 替相場の円安傾向、海上運賃の上昇により養 鶏産業においても配合飼料価格の上昇を余儀 なくされた。そのためわが国ではトウモロコシ に代わる飼料資源を自給しようと、飼料用米の 生産が各地で行われるようになった。飼料用 米の生産規模は平成20年度に全国でわずか l.OOOhaであったもの力、平成21年に「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」が施行されたことにより急激の増加し、平成23年に は34，000haと実に34倍にも増加し、さらに増 加しつつある。現在、養鶏農家での米の利用 は単にトウモロコシの代替えとされていることが 多ぐそのメリットを販売増にまで活かしきれて いないのが現状である。しかし、米にはトウモ 口コシにはないメリットを有していることが知られ ている。特にビタミンE関連物質であるトコトリ ェノールやyオリザノールといった抗酸化活性を 有する成分が多く含まれていることから、鶏卵 の保存性の向上にも有効であることが期待され る。そこで我々は農林水産省委託研究プロジェ クト「自給飼料を基盤とした国産畜産物の高付 加価値化技術の開発」の補助を得て、飼料用 米あるいは米関連資材を採卵鶏に給与した際 の鶏卵への成分の移行量および保存性への 影響について調査したので紹介したい。