今，改めて方針管理を見直す-成功の鍵は「基本を忠実に」

摘要

本稿では，近年の方針管理の低迷を憂い，その本質的成因は，多くの企業が方針管理の基本に忠実に教育し実践することを怠っているためだと断じた．そして，そこで基本として重要であるにもかかわらず，近年特に形骸化が激しいと思われる基本について述べた。 ただし，実は筆者は「方針管理の基本」が，それだけでよいとは思っていない.方針管理の方法論自体にもまだまだ不完全であったり，欠陥もあるし，近年の変化に対応しきれなくなっている分野も多いと考えている．方針管理は1980年代であたかも完成されたかのような誤解を受け，1990年代から「戦略的方針管理」などのような，経営の上流部分に関する議論は進められてきたものの方針管理自体を改善しようという議論はあまり活発ではなかったと考えている。 たとえば，以下のような点はまだまだ改善の余地があると考えている。 ①プロジェクト的方針の実際的な管理方法②期間管理とプロジェクト管理との融合方法③クロスファンクショナルチームによる活動の取り込み方法④ネットワーク組織·マロトンクス組織における方針の展開方法⑤方針管理の集約の方法論⑥方針変更の方法論⑦IT特にネットワークを応用した展開，管現集約の効率化⑧トップ診断と専門部門による診断との融合⑨短期間での教育方法⑩日常管理と方針管理との棲み分け，使い分けの方法論?財務指標からの方針の展開方法?財務指標への貢献に対する分析方法?人事考課との関係本稿をきっかけとして，各社で方針管理を役に立たせるための見直しとしていただければ幸いであるが，さらに上記のような点についての「新しい基本」についても研究が進められれば幸いである。