( S293) 超急速加熱を利用して創製した微細粒DP 鋼の組織と引張特性

摘要

軟質なフェライト母相と硬質な第二相マルテンサイトから構成される低炭素DP 鋼は、優れた強度－延性バランスを示す自動車用高強度鋼板として広く利用されているが、自動車の燃費向上を目的とした更なる高強度化と加工性の改善が要求されている。その解決策の一つとして、フェライト母相を強化することで、DP 鋼の基礎強度を高めつつ、フェライト／マルテンサイト間の強度差を小さくすることで局部変形能も同時に改善する方策が注目されている[1]。その一方で、著者らは、マルテンサイトを出発組織として冷延DP 鋼を製造するとき、昇温過程で生じる冷間加工組織の再結晶よりも先にオーステナイトへの逆変態が生じた場合にDP 鋼の母相組織が再結晶フェライトから焼戻しマルテンサイトへと遷移することを明らかにした[2]。このような加工熱処理を活用した母相組織の変化によってDP 鋼の力学特性の改善が期待できるが、数十°C/s 程度の昇温速度では加工組織の再結晶を抑制することは難しい。そこで、本研究では超急速加熱による冷延DP 鋼の組織と力学特性の変化を調査した。