多様な生活の場で展開する高齢者への看護介護保険施設等入所中:特別養護老人ホームにおける看護職の役割

摘要

特別養護老人ホームは，65歳以上の高齢者で，身体上または精神上の著しい障害があるため常時介護を必要とし，かつ在宅生活が困難な高齢者に対し，入浴?排泄?食事などの日常生活の世話，機能訓練，健康管理，療養上の世話を行うことを目的とする施設である.いわゆる「終の棲家」として，入所期間などを制限されることなく本人の希望に応じて生活をし続けられる施設として位置付けられている.医師や看護職員の配置は人員基準上義務付けられているが，医師は常勤であることは求められておらず，常勤の配置医師がいる施設は2.7%であり,多くは非常勤（嘱託）での配置である.看護職員は，入所者数が50人であれば2人，100人であれば3人（いずれも常勤換算数)のように，入所者数に応じて最低限配置すべき人数が定められている.平成29年の全国調査によると，1事業所当たりの看護職員の常勤換算数は平均4.4人，看護師数は1事業所当たり平均2.5人であることが報告されている.夜間に看護職員を配置している施設はわずか5.2%であり，85.6%の施設はオンコール体制により夜間対応を行っている現状にある.また，平成27(2015)年4月に原則，新規入所者は要介護3?5の者に限られるとする制度改正が行われ，入所者の要介護度は重症化している.平成28年の調査によると，要介護度別入所者数の構成割合は，要介護5が32.9%と最も多く，次いで要介護4が35.7%，要介護3が23.0%であり，要介護3以上の入所者割合が約90%を占めてぃる.このように，要介護度の重症化に伴い，医療的ケアを必要とする入所者が増加しているが，看護職員の配置基準は変わっておらず，限られた医療提供体制の中で看護職がどのような役割を担っていくのかは重要な課題である.そこで本稿では，特別養護老人ホームの看護職の役割について最近の研究報告をもとに述べる.