日本のうつ病と外国のうつ病-日本人のうつ病患者と諸外国のうつ病患者の間には性格面と症状面における違いはあるのか

摘要

日本と諸外国のうつ病における性格と症状との相違を検討する．性格面では両者に共通する次元レベルでのパーソナリテ相性として"対人面での過敏性","他者への依存性"が確認できた.症状面では不安,喜びの消失,緊張，意欲の欠如,興味の喪失,集中力低下，不全感,不適切感,無価値感などが共通して認められた．一方,罪責感を訴える患者の比率に相違は認めないが,その内容,とくに罪責感を示す対象には文化的な差異が認められ,日本ではよリ対人的葛藤が問題となっていた．身体症状は西洋対非西洋社会という構図での差異は認められず,受療場面における患者-医師関係などの医療制度が未整備な地域で身体症状の頻度が高かった．今後,比較文化的な検討を進めていくには,生断-心理-社会的な要因を評価できる共通の客観的指標の開発が必要とされている．