過敏性腸症候群に肥満細胞は関与するのかlBS患者と動物実験の報告から

摘要

過敏性腹症候群（irritable bowelsyndrome：IBS）は機能性消化管障害（functional gastrointestinal disorders）のひとつに分類され，慢性的な腹痛あるいは腹部不快感（内臓知覚の変化）と便通異常（便秘や下痢）を伴う疾患である．診断基準はローマ基準（2006年改訂，RomaIII）において規定され，消化管運動障害の特徴から便秘型（constipation－type），下痢型（diarrhea－type）および便秘と下痢を繰り返す交代型（mix－type）の3つに大別される．その病因は明らかとなってはいないが，疫学調査から慢性的なストレスあるいは腸管内の感染·炎症が引き金となり，自律神経系や腸壁内神経系に支障を与え発症すると考えられている．近年，臨床·前臨床における実験結果から，肥満細胞とこれら神経系とのかかわりあいが注目されている．