精神疾患の病態解明と客観的治療評価に向けたPETイメージング研究

摘要

精神疾患の研究では，症状がどのような心理過程に起因しているかを対象にした精神病理学的研究，治療薬の作用機序をさぐる精神薬理学的研究，神経伝達や遺伝子から疾患の特徴を抽出しようとする生物学的研究などのアプローチがなされている.しかし精神疾患研究の困難さは，神経変性疾患に見られるような脳内異常タンパクの蓄積などが認められず，また言語的な交流に診断の根拠の多くを依存しているため， 完全に疾患を再現できるモデル動物の開発が難しい点がある.その一方で統合失調症の陽性症状を軽減する抗精神病薬や抑うつ症状を改善する抗うつ薬など，精神疾患には症状を改善することができる治療薬が存在する.しかしこれら薬物の動物に対する効果を測定するだけでは精神疾患の病態に迫るには限界があり，実際にヒトを対象としたそれら薬物の作用部位の研究が末梢血や死後脳を使って行われたが，中枢と末梢の違い，あるいは直前の治療の影響など課題が多いまま現在に至っている.