Ⅱ.上咽頭癌臨床像におけるEBVの関与と意義

摘要

上咽頭癌は他の頭頸部癌と比較して高転移性で，診断 時に半数以上の症例でリンパ節転移を来している。この特徴は上咽頭癌の発癌に深く関与するEpstein-Barr ウィルス（Epstein-Barr virus: EBV)によるところが大 きい。さらに上咽頭癌は顔面頭蓋の最深部にあり，そ の周囲には主要な動静脈や脳神経が密集しており，一般 に手術的アプローチが困難である。このようなやつかい な特徴を有する上咽頭癌は，一方でp53蛋白がほとhど の症例で野生型であるため化学放射線療法に高感受性で ある。そのため，上咽頭癌治療の第一選択は化学放射線 療法である。本稿では，上咽頭癌の特異な臨床像にお けるEBVの関与とその意義について述べる。