薬剤誘発性心血管疾患

摘要

高齢化社会に伴い各種疾患を有する患者数は増加し，治療目的で多くの薬物が使用されている.また個々の患者においては複数の薬物を投与されている場合も多く，薬物有害事象のリスクも高くなつている.薬物の副作用による循環器疾患は，抗うつ薬やマクロライド系抗生剤などによる薬剤性QT延長症候群，甘草などによ る薬剤性高血圧，アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬による心筋障害などが知られている.近年多くの疾患に使用されている分子標的薬は.その有効性の反面で有害事象としての心筋障害や高血圧も多〈報告されている.また各種薬物の効果により基礎疾患の長期予後が改善するに従い，薬物に起因する心血管疾患も増加すると考えられ，発症リスクのマネージメントや早期診断?治療が必要となる.そのためには，各薬物が原因で生 じうる疾患とその特徴や，併用薬物によつて生じうる薬物相互作用を十分理解し，治療やリスク因子の管理をすることが重要である.