小児短腸症候群における腸内細菌叢異常とD-lactic acidosis

摘要

短腸症候群にまれではあるが，D-lactic acidosisが発症する.本症は，小腸の吸収障害によつて大腸の細菌 叢の変化をきたし，D型乳酸を産生し代謝性ァシドーシスにより神経学的異常を呈する疾患である.神経学的 異常の機序はまだ不明であるが，短腸症候群患者が多量の炭水化物を摂取したとき，大腸に運ばれた不消化の 炭水化物により酸抵抗性乳酸菌の発酵が起こる.その結果，多量のD型乳酸が産生され，大腸での代謝能を 超え血中D型乳酸の濃度が増加する.本症は，短腸症候群をフオローしていく際にはかならず念頭において おかねばならない病態である.D-lactic acidosisを発症した症例の尿中D型乳酸値は，状態が良好のときで も高い比率を示した.D-lactic acidosisの発症を予見するマ一力一は存在しないが，血中?尿中D型乳酸値 の測定は患者の状況を把握し，本症発症の可能性を推察して予防をはかるために有用と考える.