肝線維化の機序とその制御

摘要

肝内でI型コラーゲンを主体とする細胞外マ卜リックス物質を産生する主要な細胞はビタミンA貯蔵星細 胞であり，本細胞の機能解析を主体として肝線維化研究が発展してきた.炎症の慢性化とともに誘導される星 細胞の活性化の分子機構，細胞外マ卜リックス物質の代謝を制御するtransforming growth factor beta (TGF-beta) などの成長因子やそれにまつわる細胞内シグナルカスケ一ド，肝線維化抑制物質の探索，さらには星細胞以外 のコラーゲン産生細胞の同定などについて旺盛な解析が展開している.また，肝を構成する細胞間の相互作用 も研究のターゲッ卜になりつつある.このような分子細胞生物学的な基礎研究の進歩と連動しつつ，肝線維化 に関連する臨床研究も活性化し，線維化バイォマーカーや非侵襲的線維化診断法の開発が急展開している.