セルロース性バイオマスの酵素糖化における現状と課題

摘要

セルロースは植物の細胞壁を構成する主要な成分で，地球上で最も豊富に存在するバイオマスである．セルロース性バイオマスは食糧と競合せず，太陽が存在する限り再生産されることから，有限の化石燃料に代わる有望な資源として，古くからその有効利用に向けた研究が行われてきた．筆者が所属する研究室でも，第2次オイルショック以来30 年以上にわたって糸状菌（カビ）由来酵素を用いたセルロースの加水分解（糖化）に関する研究を行ってきた．しかし，後述するようにセルロースの糖化は非常に難しく，大量の酵素が必要で多大なコストを要することから，実用化には困難を極めていた．現在，筆者らはNEDOプロジェクト「バイオマスエネルギー技術研究開発／バイオ燃料製造の要素技術開発事業／バイオ燃料事業化に向けた革新的糖化酵素工業生産菌の創製と糖化酵素の生産技術開発」に参画し，革新的酵素工業生産菌の創製に携わっているが，最近になってようやく実用化に耐えるセルロース性バイオマス分解酵素剤の開発と生産に目処が立ちつつある．そこで，本稿ではセルロース性バイオマスの酵素糖化における現状と課題について解説する．