そして、羽根車から軸系に作用する外乱の代表例は、羽根車の動翼と静翼との流体干渉に起因する流体加振力で、この加振力の卓越周波数はZN(Z;インベラブレード枚数、N;回転周波数)である。他の外乱としては、羽根車やボリュートの製作誤差などに起因する回転周波数の流体加振力があり、この加振力は羽根車の不釣合い加振力の数倍に達することもあることが辻本らにより示されている。そして、このような加振力とは別に、軸振動により流れの状態が変化し回転軸系に外乱として作用する流体反力(ロータダイナミクス効果)が存在する。ウェアリングシール何遠心羽根車(クローズドタイプ)の場合は、羽根車から発生する流体反カとウェアリングシールのそれとが合成された力が最終的に回転軸系に作用する。もしウェアリングシールに流体反力が弱い溝付シールを採択した場合には、羽根車で発生する流体反力の影響が軸振動に強く現れるであろう。この流体反力に関する研究は、Chamieh,D.Set alやOhashi et al、Tsujimoto et alらにより報告されているが、そのメカニズムが十分に解明されていないため、軸振動解析でのモデル化が困難な状態にある。遠心ポンプの回転軸系の固有振動数(共振周波数)や安定性の予測精度を高めるための鍵は、これらの効果を定量的に扱い軸振動モデルに組み入れることである。このように流体に起因する様々な特性が反映された振動特性を有する遠心ポンプの振動は、流体が関連した複雑な現象が多い。本稿では遠心ポンプ特有の流体が関連している振動事例を紹介し、筆者の研究成果を織り交ぜながら現象の理解とその対策について説明する。
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