物資内包ジャイアントベシクルの効率的作製とこれを利用した　べシクル内マイクロバイオリアクションシステムの開発

摘要

ベシクルは，リン脂質などの両親媒性分子により形成される二分子膜が閉鎖小胞構造を形成した分子集合体である（Fig．1）．ベシクルは，外側の水相（外水相）から脂質二分子膜により隔てられた，直径数十ナノメートルから数百マイクロメートルの内部水相（内水相）を持つ．その構造の類似性から，ベシクルは生体膜のモデルとして利用されているほか，医薬串·化粧品·食品分野で機能性成分のキャリアーとして様々な利用法が検討されている．また，ベシクルの内水相に酵素を封入してナノサイズのリアクターとして反応に用いる検討も広く行われている1，2）．このようなべシクル内での酵素反応システムは，生物の機能を模倣した人工細胞の構築に向けたツールとして近年注目が集まっている．著者らは，このべシクルの中でも，直径が1マイクロメートル以上，すなわち細胞と同等のサイズをもつ"ジャイアントベシクル"3）を利用して，細胞環境を模倣したバイオリアクションシステムを構築する技術について検討している．本稿では，著者らが開発した新規なジャイアントベシクル作製法である"脂質被覆氷滴水和法"について解説するとともに，本法により作製した酵素内包ジャイアントベシクルを用いたマイクロバイオリアクションシステムに関する検討結果について紹介したい．