有機遷移金属錯体の構造び反応機構と触媒作用に関する理論的研究

摘要

典型元素ではsp軌道が原子価軌道として主要な役割を果たすのに対し、遷移金属錯体では中心金属のd軌道がその役割を担い、配位構造や金属の電子数によっては安定な空d軌道が存在する。 このため、典型元素とは異なる構造や反応性、分子内·分子間相互作用を示す。 古賀伸明氏は、非経験的分子軌道法や密度汎関数法の量子化学計算手法を用いて、遷移金属原子と炭素原子間の化学結合をもつ有機遷移金属錯体の特徴ある構造や、有機遷移金属反応の反応機構や触媒作用について理論的および計算化学的研究を進め、特徴的な構造を引き起こしたり、ある化学反応経路を有利にしたりする電子的要因について解析を行い有用な知見を得るなど、先導的理論研究を行ってきた。 以下に同氏の主な研究業績を紹介する。