LSMO 薄膜の金属-絶縁体相転移を利用した自己熱制御材料の相転移温度に及ぼす基板種とアニールの影響

摘要

近年，室温付近で熱放射率が大きく変化する材料を用いた人工衛星用放射率可変素子(Smart Radiation Device)が注目を集めている．SRD の導入によって熱制御システムの軽量化と性能の向上が期待されている．SRDに用いる材料は室温付近で熱放射率が大きく変化する必要があり，その候補材料として，ペロブスカイト型マンガン酸化物の一種であるLa_(1-x)Sr_xMnO_3（LSMO）が挙げられる．LSMO はMn の二重交換相互作用による電子遷移の挙動が温度によって大きく変化することで生じる金属-絶縁体相転移を示し，この相転移に伴って熱放射率が相転移温度付近で大きく変化する．LSMO バルクの金属-絶縁体相転移温度はx=0.175 のときに室温付近になることがわかっており，すでにタイル状のLSMO が人工衛星はやぶさに熱制御システムとして搭載され，試験的に運用された．