海洋音響技術の最近の動き：沿岸漁業ソーナー情報を用いた海のGIS

摘要

200海里体制の定着化により、いままで以上に沿岸漁場海域の高度利用、水産資源の維持·管理が重要な問題になってきた。 漁業振興を考える上で、複数年にわたって等質のデータを蓄積できるモニタリングシステムの構築は極めて重安である。 このための計測方法のひとつとして超音波機器を利用した水中音響リモートセンシング法がある。 この方法は海中空間に生息する海洋生物の資源量や分布特性などを定量的に計測できる有効な方法として広く利用されている。しかし、沿岸漁場に生息する対象生物の分布特性を定量的に明らかにするためには、音響情報だけでは不十分で海洋環境や海底地形、他の生物データなどの複合情報を必要とし、データの形式及び時空間的スケールが異なるデータを用いて検討しなければならない。 近年、コンピュータテクノロジーの発展に伴い、ある地域内の空間対象物について得られる多様な空間情報を総合的かつ効率的に蓄積·表示することが容易にできるようになってきた。 地理情報システム(GIS: Geographic Information System)はまさにこの機能を有したIT技術と言える。 すなわち、海洋GISは海中空間に生息する海洋生物に関連する海洋環境、海底地形などの複合情報を、マッピング、可視化、三次元化を行い、それらの相関を解析、表示できる空間解析ツールとも言える（第1図）。そこで本稿では、水中音響リモートセンシング法とGIS技術とを統合した沿岸漁業振興のための海のGIS構築に関する研究事例について紹介する。