クロロアセトン超音波分解生成物の酵母に及ぼす影響－熱量測定法を用いた酵母の増殖挙動からの解析

摘要

水中に超音波を照射するとキャビテーションと呼ばれる気泡の発生、成長、崩壊がおこり、数千度、数百気圧の高温·高圧の反応場が形成される。この超音波キャビテーションにより化学反応の顕著な促進効果が報告され、超音波の利用によるナノテクノロジーの高度化と革新が期待されている。 超音波を水に照射したときに生じる作用には化学的作用と物理的作用の2つがある。 有機化合物の超音波分解では化学的作用であるOHラジカルによる酸化還元反応、および高温高圧状態による熱分解反応や燃焼反応が主であり、このような反応を利用して有害有機塩素化合物など様々な物質の超音波分解の例が数多く報告されている。しかし、超音波分解により生成した物質は定性、定量できるものばかりではなく、未知の極微量物質の生成が懸念されており、それらが生物に与える影響についての研究はほとんどなされていない。 よって、本稿では水処理過程で発生する有機塩素化合物の一つであるクロロアセトンを取り上げ、その超音波分解生成物が酵母の増殖にどのような影響を与えるかについて、熱量測定法を用いて解析する方法とクロロアセトンの超音波分解生成物の酵母に対する毒性評価について概説する。