生体分子の吸着忌避特性を持つ表面が引き起こすナノメートルスケールの相互作用

摘要

バイオセンシングにおける非ターゲット分子の吸着抑制，人工血管·人工心肺装置表面への血中タンパク·浮遊細胞の吸着·接着の抑制，船舶底面への海洋生物の付着の防止など，様々な分野で生体分子の非特異的な吸着を抑える表面の設計，構築の重要性は高くなってきている。一般の実験室レベルで生体分子の非特異的な吸着を抑えるための最も簡便なアプローチとしてはポリエチレングリコール（poly（ethylene glycol）：PEG）およびその誘導体による表面修飾が一般的である。表面上に固定された高分子は水中では完全に水和しており，高い空間的自由度を持つ。この高分子鎖をかき分けて生体分子が接近班る，というプロセスは自由エネルギーの観点から起こりにくいことは明白である。つまり高分子鎖の"立体障害”が吸着忌避の原因であるというアイデアでPEG修飾表面の生体分子の吸着忌避のメカニズムは説明されてきた。