東京ガスが今後の主要政策発表グループ含め新しい事業環境に対応

摘要

東京ガスはこのほど，2011年11月に策定した同社のグループ経営計画「チャレンジ2020ビジョン」の実現に向けた2015～2017年度の主要政策を発表した。「チャヤンジ2020ビジョン」は，同年3月に発生した東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故を踏まえて策定されたもので，同社の今後10年の多様な取り組みと目標が示された。具体的には2020年に管内の家庭用燃料電池「エネファーム」をそれまでの9千台から約33倍の30万台に増加させ，コージェネシステムを150万kWから2.6倍の400万kWに拡大させるとした。燃料転換でも10年間の新規獲得都市ガス量を約25億m3とし，電力事業では2020年の国内発電規模を自社分で200万kWから300万～500万kWに拡大するとした。もちろん，これに伴うLNG輸入量の増加や基地の基盤強化，天然ガスパイプラインの増設を行う予定で，2011年度のガス販売量150億m3を2020年には220億m3に増加させると宣言した。それから3年，この間同社が数々の成果を挙げ，売上高や経常利益など右肩上がりを続けてきたことはよく知られているところ。事業拡大があっても，後退をすることを知らないのが同社だ。ただ，一方で米国のシエールガス開発や国内での電力·ガスシステム改革の進展で事業環境が大きく変わってきているのも事実。特に電力·ガスシステム改革では今後地域独占がなくなるということで，同社も創業以来の危機的状況を迎えようとしている。今回の同社の主要政策発表は，こうした3年前との事業環境の違いを踏まえ，「チャレンジ2020ビジョン」実現に向けての来年度から向こう3年間の主要政策を示したものだが，よくみるとビジョンの実現もさることながら新しい事業環境に大きく経営の舵取りを行うという意欲がうかがえる。3年前に大々的に打ち出した「チャレンジ2020ビジョン」の旗を降ろすわけにはいかず，かといって危機的な事業環境の変化にも対応をしなければならないという苦肉の主要政策発表となっている。