音声研究の楽しみ－音響学会誌「ちょっとしたエッセイ」から

摘要

音声研究は楽しいが，難しい．思うように研究が進まず苦しいことも多いが，音声研究には夢がある．この夢の実現に向けて，これまで，自分でもびっくりすることだが，35年間も音声の研究を続けてきた．成功したこともあるが，失敗の方がはるかに多い．音声認識の研究の歴史の中で，多くの新しい技術が提案され，用いられてきたが，四半世紀前に「今後の研究課題」とされている課題の中で，6割以上がまだ解決していない．現在，音声認識の実用システムがいろいろ使われており，多様なニーズがあるが，まだ市場規模は極めて小さい．夢の実現に向けて，実用化の壁になっているのは真に何なのかを明らかにし，人と資金のリソースを集中して，大胆な新しいモデルで，失敗を恐れずに挑戦し，一歩一歩課題を解決していきたい．