高齢者の音の聞こえと騒音問題

摘要

これまでの聴覚研究は，おもに20歳前後の若齢者（多くは，大学生）を対象に行われるのが一般的であった。 その結果をもって，「人間の聴覚特性は．‥」と特に断りもなく言い表されることが多かった。 しかし，少子高齢化が著しい今日の日本にあっては，20歳代の若齢者が全人口に占める割合は15％にも満たない（さらに，2020年には10％を切ると予想されている）。 それ以外の残り90％近くの人々は，教科書的なデータとは多かれ少なかれ異なる聴覚特性をもって音を聴き，日々の生活を送っている。 この解説では，加齢によって生じる音の聞こえの変化のうち，騒音と特に関わりの深い側面を選んで概説しながら，高齢者の視点（聴点？ ）から音環境問題を見直してみたい。