電子レンジ－Microwave Oven：第3回 マイクロ波の特殊加熱効果と産業利用

摘要

20世紀初頭より長波，中波，短波，超短波が発振できる真空管のゴールドラッシュが続き，1921（大正10）年，イギリスのハルによってマイクロ波（極超短波）を発振できるマグネトロンが完成した．マイクロ波の利用は，この年に始まると言ってもよい．最初は通信専用に使われていたが，業務用，家庭用，産業用（科学，医療，工業用）熱源へと用途を拡げ，無限の可能性を秘めたエネルギー源として，今も多方面の用途開発が続けられている．マイクロ波加熱法は従来の加熱法とはまったく異なる「スピード加熱特性」，「内部加熱特性」，「クール加熱特性」をもつため，熱伝導加熱法では困難と思われてきた難題をいくつも解決し，包材ごとの加熱殺菌や膨化乾燥加工のような新しい加工手段を生み出した．マイクロ波特有の加熱特性は奥深く，多能で，真空や加圧などと併用すれば無尽蔵の用途が期待できる．「マイクロ波加熱法の魅力」にとりつかれ，ファンとなった人が何人もいる．しかし，従来の熱伝導加熱と違うマイクロ波の「スピード加熱特性」や「内部加熱特性」は，時に思いがけない失敗や事故の誘因ともなる．パンや中華まんじゅうを噛み切れないほど硬くしてしまったり，卵やソーセージを破裂させたり，フライが干からびてしまったり…と，電子レンジでの失敗例は後を絶たない．