クルマのデザイン進化論：カーデザインの進化と課題

摘要

3次元データだからデフォルメがないし、そのレンダリング（2次元のデータ出力）は実車の写真のようにリアルだから、スケッチ·テクニックの巧拙とは無縁にアイデアを比較検討できる。 近年はパワーウォールと呼ばれる大きなスクリーンにデータを実物大で投影し、デザイン案を取捨選択することが一般的になりつつある。 選ばれた案は、ただちにクレイモデルのNC切削へと移行する。 ところで、よく耳にする意見に、「コンピュータでデザインしたクルマには魅力がない」というものがある。 ほとんどの場合、これは先入観に基づく誤解だろう。 どんなにCASが普及しようと、クレイモデルなど実物大の物理的なモデルは必ず作る。 NC切削するにしても、それを吟味し、仕上げるのはモデラーと呼ばれる人たち。 彼らの職人的な手仕事を経なければ、クルマのデザインは完成しないのだ。 しかし、20年余りカーデザインの現場を取材してきた筆者としては、リアルなCASレンダリングに物足りなさを覚えるのも事実である。 かつてのデフォルメされたスケッチには、それを描いたデザイナーの思い入れが色濃く浮かび上がっていた。 覆豢赡埭扦狻ⅳ长螭胜栅Δ摔筏郡ぁ工趣い姢ひ庵兢盲皮い俊 CASレンダリングにそれを感じ取るのはむずかしい。デザインとはつまり、作り手のメッセージを形と色で伝える作業だ。 受け手である消費者はそのメッセージに触発され、心の中に隠れていたニーズに気づき、それを満たすことが自らの生活をより良くすると思えば、購入を考える。 そのためにはメッセージの強さが必要だ。 デザイン開発のプロセスのなかで、作り手の思いの強さをスケッチ段階から商品化まで維持する必要がある。 CASがそれを阻害するとは言わないが、意志（あるいは夢）とリアリティの両立はまだ今後に残された課題であろう。