超音波凝固切開装置によるベシクル凝集体への作用に関する研究

摘要

本研究では胃がんの腹腔鏡手術における病巣位置の特定やリンパ節検出のために使用する組織マーカーを提案しており，その組織マーカー破壊する手段について検討した．組織マーカーはべシクル凝集体（GCVs）から構成され，様々な生体トレーサーを内部に封入することが可能である．さらに，GCVs の破壊により内部物質の放出を制御することも期待できる．腹腔鏡手術で頻繁に用いられる超音波凝固切開装置 （USAD）は GCVs を破壊するためのデバイスとして使用できる可能性がある．USAD から放射される周波数 55 kHz の超音波を GCVs に照射し，超音波照射後の GCVs の破壊を光学顕微鏡観察と蛍光強度の測定により評価した．USAD ブレード先端と GCVs 分散液を封入したセルとの距離が 1.0 nm より近い場合，直接触れることなくGCVs が破壊されることを明らかにした．この結果から，USAD により生体に傷害を与えることなく組織マーカーを破壊できることが示唆された．