船舶自動識別装置(AIS)－AIS通信方式の特徴について

摘要

船舶の安全運航の基本となる情報は，目視による他船などの景観情報である．さらに，夜間や見通しの悪い気象·海象の環境下で情報を把握する手段としてはレーダが活用されてきた．船舶の運航者は，レーダ映像から得られる情報と景観情報を交互に確認しながら操船判断を行っている．しかし，景観情報やレーダ情報では船舶の動静は把握できるが船名までは識別できないために避航判断予測を誤る恐れがある．2002年7月1日から段階的な搭載が義務付けられた船舶自動識別装置（Automatic Identification System，以下AISという）はこのような船舶間の衝突回避を主なる目的としており，各船が自船の呼出符号·船名，船位，進路，速力などを周期的に放送するため，危険な見合い関係の場合でも国際VHF（Very High Frequency，156-162MHz帯 o線電話装置による相手船の呼出しと音声通信で，運航者間の相互の行動意思が伝わり，未然に衝突を回避することができる．ここでは，導入から約5年を経てその利用効果が次第に評価されてきている船舶搭載用のAISについて，導入の背景と経緯，通信方式の特徴，構成を，今後の小型船への普及が期待される簡易AIS（Class B＿CS，以下Class Bという）を含めて解説する．