カーボンナノチューブ表面吸着時のTi金属鎖の束縛エネルギーと電子構造

摘要

単層カーボンナノチューブ（以下SWNTと略す）の表面にTi原子を吸着させると、AlやAgの場合よりも安定で連続したナノスケールの金属ワイヤーが生成される。 また、ナノチューブ表面をTi層でコートすると、Tiが鋳型として働くことにより他の金属元素の金属ワイヤー形成が促進されることが知られており、ナノデバイスへの応用が期待されている。この論文では、SWNTに吸着させた金属鎖（Ti,Al,Au）の束縛エネルギー及び電子構造について第1原理計算を用いで考察している。 Al,Ag金属鎖の椅子型の（6，6）SWNT吸着時における束縛エネルギーはそれぞれ、0.52eV,0.25eVとなり、ジグザク型の（10,10）SWNTでも同様の結果となった。 束縛エネルギーの小さな値から、Al,Ag金属鎖の吸着は化学変化を伴わず、SWNT表面での拡散が大きいと考えられる。 また、Auの外殻のs，d軌道がほぼ満たされでいるのに対して、Alは3p軌道に1つ価電子を持つためにより大きな相互作用が働き、その結果としてAlの束縛エネルギーがより大きくなったと考えられる。