介護支援ロボットの実証試験における倫理審査と被験者保護について－排泄介護総合支援ロボット「トイレアシスト」の事例報告

摘要

以上のように，介護支援ロボットの研究開発における被験者保護については，研究に携わる人々が真剣に考えなければならない問題であるにもかかわらず，筆者の調べた範囲では，被験者保護や倫理審査に関する具体的な取り組みの事例が紹介された文献がほとんどなかった．そこで，本論文では，2005年度から2007年度にNEDO人間支援型ロボット実用化基盤技術開発事業の枠内で実施された，「トイレアシスト」の研究開発を対象に，ロボット開発における被験者保護の取り組み方についての事例報告を行う．本研究では，実証試験の評価対象者と倫理観点における人権擁護の対象者とが異なるという，介護支援ロボット固有の問題点の下で，倫理観点における配慮を怠りがちな評価対象者以外の被験者を実験のなかでいかに扱うべきかについて解を与えたという点で，筆者らは報告に値すると考えた．加えて，研究の実施を通じて問題点も明らかになったので，これについて検討する．