密度汎関数法によるZnS蛍光体の発光機構解析

摘要

硫化亜鉛(ZnS)の母体結晶に発光元素（Mn，CuおよびEu）を添加した蛍光体において，結晶をクラスタによりモデル化し，添加元素のスピン多重度が発光過程で変化することを考慮して密度汎関数法による電子状態計算を用いることによって，その発光機構を理論的に解明した。 これにより，おのおのの実測値に近い発光波長の計算値が得られ，本計算方法の有効性が実証された。 また，発光過程を分子軌道により考察した結果，ZnS:Mnは母体結晶で吸光してMn上で発光すること，ZnS:Cuは発光の際に母体結晶から中心の発光元素へと電子移動が起こること，およびZnS:EuはEuに電子が流れ込んだ電荷移動状態が発光に関与することがわかった。