投入式プロックの散乱制御に関する実験

摘要

栄養塩類の豊富な補償深度以深の海水を補償深度以浅 に混合するため，人工の山脈を海底に構築し潮汐流や海 流などの流れエネルギーを利用して海域の基礎生産を増 大する公共事業が行われている。この人工海底山脈を構築する事業は，1995年に水産庁の補助により，社団法人 マリノフォーラム21(以下，MF21と呼ぶ）の実証事業 として始まった。その結果，海域肥沃化効果と実行性等 が実証され1、2003年からは国が50%補助する県の公共 事業に発展し，10事業が水深100m以浅の海域で実施さ れた。さらに，この海域肥沃化事業の展開が強く求めら れ，水産庁は2010年から大水深海域で直轄事業を開始し た2)。しかし，事業の大水深化に伴って山脈を構成する ブロックや石材の海中での散乱が大きくなり，人工海底 山脈の底面積の拡大と総体積の増大が課題になっている。 大水深化に伴う海底山脈の大規模化を極力抑えるため， 少ないプロックで効果の高い海底山脈を構築する技術が 望まれている。また，直近の事業では魚礁効果の向上お よび再生資源の利用促進のため，石材で構築された海底山脈がリサイクルブロックで被覆されており，プロック の散乱を抑える必要性が高まっている。既往事業におい ても，散乱を減少させる工夫が試みられた。例えば，作 業船から同時に投入するブロックや石材の数を減らし投 入開始範囲を狭め，船底の開口速度を調節して開口幅を段階的に広げる方法等が試みられたが，効果は限定的で あった3)。これまで，ブロックや石材の散乱を抑える対 策は作業船上での操作に限られ，投入後，落下するプロ ックの運動を制御して散乱を抑える研究はなかった。