(119)接触電気抵抗を指標とした高力ボルトの緩み検知に関する研究

摘要

老朽化した社会基盤構造物の更新が困難な状況の下，構造物の効率的な維持管理·補修補強による長寿命化の重要性が高まってきている．鋼桁，鋼製橋脚など鋼構造部材の接合に多用されている高力ボルト継手に関しては，定期点検において，施工不良および供用中の振動などによるボルトの緩み（軸力の低下）が報告されている1)．ボルトの緩みによる接合部の機能低下，ボルトの脱落による事故を防止するため，ボルトの緩みの有無は維持管理上の重要点検項目のひとつである．高力ボルト継手の点検においては，現状では，熟練技術者による打音検査が主に実施されている2)．打音検査では，ボルトを1本ずつたたき，技術者の感覚に基づき緩みの有無を調査する．技術者の高齢化および技術者数の減少に伴い，信頼性が高く効率的な新しい点検技術の確立が求められている．これに対し，超音波を用いる手法3)，打撃に対する反発力を計測する手法4)などが提案されている．ただしこれらの手法は，いずれもボルト1本1本に対する検査手法であり，膨大な数のボルトを用いる鋼構造物の継手部の点検には多大な時間とコストを要する．