山形県のナラ枯れ被害で研究者と現場技術者 が活用する被害予測技術と総合防除システム

摘要

ブナ科樹木萎凋病（以下ナラ枯れ）は、ミズナラゃコ ナラを主とするブナ科の樹木に枯れを引き起こす流行病 です。ナラ枯れの原因はナラ菌と呼ばれるカビの一種で、 このカビはカシノナガキクイムシ（以下カシナガ）と呼 ばれる材の穿孔虫によつて媒介されます。被害は最北端 の青森県から最西端の山口県まで日本海側各地を中心に 太平洋側も含めて全国的な規模で発生しており、今なお被害は拡大増加傾向にあります（囡-1)。東北地方では2010年度に新たに岩手県と青森県で被害が発生し、 東北全県が被害地になりました（図-1)。東北地方では、 枯死しやすいミズナラの現存量が多いことから、今後の 被害量の増大と被害地域の拡大、分散が危惧されます。山形県での最初のナラ枯れ被害は、1959年日本海に 面した鶴岡市（旧西田川郡温海町早田）での発生が記録 されています（図-1)。当時、被害地周辺では燃料に使 用する薪や炭を得るため、民有林の広葉樹は定期的な伐 採タこより小径の若い山になっていました。一方、国有林 の広葉樹は大径木生産を目指した壮老齢の山という構図 でした。被害は、大径木が多く生育する国有林で発生し、 伐採を繰り返して山を利用し萌芽で更新していた民有林 にはありませんでした。被害発生地域の住民は枯死木の 払い下げを即座に国有林に申し出たため、枯死木は直ぐ に伐採され燃料として利用されました。