食中毒をひき起こすウエルシュ菌の 毒素と受容体の複合体構造の解明

摘要

ウエルシュ菌が産生する毒素（CPE)は，腸壁 を傷つけることで食中毒をひき起こす.CPEの 受容体は，クローディンと呼ばれる膜蛋白質で あり，われわれの体表面や器官表面において細 胞間隙のバリァ機能を担うきわめて重要な分子 である.CPE分子内の受容体結合ドメイン(C-CPE) は，単にクローディンに結合するだけでなく， クローディンの重合を阻害し，細胞間隙のバリ ァ機能を可逆的に変化させることが知られてい た.このC-CPEの機能を利用して，細胞間隙の透 過特性を制御する新しい薬物送達法の開発力試 みられてきていたが，C-CPEがクローデインとど のような相互作用で結合しているのかというこ とや，どのようにしてクローディンの重合を阻 害しているのかという基礎的なことは，構造生 理学的にはほとんどわかっていなかった.