血管細胞機能と動脈硬化症における転写因子の意義：PPARを中心にした発生細胞学的アプローチ

摘要

メタボリックシンドロームは，高血圧症，糖尿病，高脂血症など生活習慣病の集積であり，動脈硬化症の発症母体となる．従来メタボリックシンドロームの共通の病因としてインスリン抵抗性あるいは高インスリン血症そのものの意義が注目されてきたが，最近では肥満に伴う脂肪細胞からのアディポサイトカインの分泌異常により，生活習慣病の発症さらに，内皮細胞，血管平滑筋細胞や単球／マクロファージの形質転換が生じ動脈硬化症が生じると考えられるようになっている．インスリン抵抗性改善剤チアゾリジン誘導体は，核内受容体であるPPARγに結合することによりその薬理作用を発現する．PPARγは脂肪細胞に豊富に発現し脂肪細胞分化促進に作用するが，内皮細胞，血管平滑筋細胞，マクロファージにもその発現が認められる．最近の研究より，脂肪細胞や·れら血管細胞は共通の前駆細胞より分化する可能性が示され，したがってPPARγは，“間葉系前駆細胞”の分化制御において意義を有する可能性，さらにメタボリックシンドロームの成因およびその合併症における重要性が示唆される．