インフルエンザウイルス感染とシアル酸

摘要

A型インフルエンザウイルスは，野生の水禽類を自然宿主とすると考えられている．ウイルスの感染環はヘマグルチニン（HA）が細胞表面のレセプターであるシアロ糖鎖に結合することで始まる．ウイルスが由来する宿主動物によって異なるHAのレセプター認識は，宿主域決定要因の1つであると考えられてきた．従来，ブタを介した古典的な新型リアソータントウイルス出現モデルでは，ブタ呼吸器内での増殖中に鳥型ウイルスのHAがヒト型ウイルスレセプター認識の特性を獲得する可能性があることが示されてきた．新たに，ヒト呼吸器内に鳥型ウイルスレセプターの存在が示され，鳥由来ウイルスが感染可能な環境が存在することが判明したことから，ヒト呼吸器内で鳥型ウイルスのHAがヒト型ウイルスレセプター認識の特性を獲得する可能性も考えられる．新型インフルエンザウイルス出現機構の解明には，鳥由来ウイルスのヒトへの適応過程を1つ1つ把握していくことが重要である．