科学分析で甦る纏向遺跡の文化——微細有機物から植生や環境を再現する

摘要

奈良県桜井市の纒向遺跡は,奈良盆地東縁南部の三輪山北西裾一帯に広がる段丘と扇状地上に位置する大遺跡であり,弥生時代末期から古墳時代前期にかけての集落と古墳群から構成されている（図1) .その本格的な調査は1971年（昭和46年）,奈良県立橿原考古学研究所により住宅と小学校の建設に伴う発掘調査から始まった.当時は弥生時代と古墳時代の編年観が数十年古く見直された時期でもあり,『魏志倭人伝』に記述のある邪馬台国の時期も,それまで弥生時代の範囲内と考えられていたものが,古墳時代にかかる時期へと修正された.このため,その時期の大集落である纒向遺跡が注目を集めることになったのである.