細胞が食べるナノサンドイッチ― 無機層状ナノ粒子のドラッグデリバリー材料への活用

摘要

新薬の開発には多額な費用が必要であり，その開発環境は厳しくなりつつある．この課題を解決するために，既存の医薬の薬理効率を向上させるドラッグデリバリーシステム（DDS） が注目されている。そのため，DDSを構築するうえで必須となるドラッグデリバリー（DD）材料として，各種ナノ粒子に関する 研究·開発が活発に行われている．すでに臨床試験や実用化まで進んでいるDD材料としては，リポソーム，高分子ミセル，デンドリマー，カーボンナノチューブ，カーボンナノホーンなどがあり，とくにリポソームは安全性の高いDD材料として医薬品のほか，食品や化粧品などにも応用されている．一方，無機系ナノ粒子をDD材料に用いた例は少なく，ヒドロキシアパタイトや炭酸カルシウムによる医薬の徐放が報告されているのみである。これまで無機系ナノ粒子は，リポソームなどの有機系ナノ粒子に比べ，自己組織化や化学修飾，粒子サイズの制御などが複雑であり，DD材料への応用は難しいとされてきた．