建部賢弘の数学ーとくに道三角関数に関する三つの公式について－

摘要

建部賢弘は17世紀後半から18世紀前半にかけて活躍し，近世日本の数学史において一つの頂点を極めた数学者であった．建部が関孝和（？ －1708）の高弟であったことはつとに知られているが，関孝和に比￣してその数学上の業績については必ずしもよく理解されているとはいえない．本論説では，まず第1節で建部の年譜および著作を概観し，第2節で建部の数学の若干の概要を述べる．第3節では，円周率計算と並んで建部の最大の成果の一つである円弧長の無限級数への展開計算の概要を述べ，最後に第4節でその意味について考察する．