今年の原油価格を展望する底の見えない暴落と再暴騰の可能性

摘要

まさに激動の1年ともいえる2008年の原油価格は暴騰に始まり、暴落に終わった。 2009年こそ、消費国にとっても産油国にとっても安定した経済成長が維持できる適正な原油価格を持続させ、急激な景気後退に苦闘する石油業界にとっても明るい日差しの照る1年になってほしいと期待する者は筆者だけではないであろう。 しかし、今年の原油価格の動向を展望すると、安定した原油価格による持続的経済成長という明るい未来を単純に予測することができないことが大きな悩みといえる。 理由については、後に詳しく述べるとしても、実際に、エネルギーに関する研究を始めて28年になる筆者の経験でも、2008年の原油価格の動きほど、摩詞不思議なものはなかった。 現在の原油価格の動きは、従来型の石油だけの需給を見ても理解することはできないうえに、経済アナリストのように石油の専門知識を持たずに株価の予想のようなマクロ経済分析によっても、原油価格の正確な動きを捉えることはできない。石油と金融の両方の知識と経験を駆使して、原油価格の将来展望を行うことが何よりも求められる。その点、筆者は22年の金融機関における生活と6年の資源エネルギー経済学者として豊富な経験を持ち、石油と金融という二つの切り口から原油価格の動向を分析できるという有利な立場にいる。