レチノイン酸は,マウス骨芽細胞MC3T3-El細胞の分化誘導を強く誘導し,血清誘導性転写国子activator protein-1をc-fosとc-jun遺伝子発現を抑制することによって阻害する

摘要

ビタミンAの活性型代謝物であるレチノイン酸(RA)は,骨形成と石灰化に密接に関与する栄養素の一つである.しかし,そのRAの生物活性の機構は,詳細に解明されていない.骨組織の形成と石灰化において,骨芽細胞は,より成熟した段階の細胞に分化し,骨基質成分を産生することによって,中心的な役割を果たしている.さらに,幾つかの研究は,転写因子activator protein-1 (AP-1)が,本細胞の分化に関与することを報告している.そこで,私どもは,マウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞を用いて, RAが,本細胞の分化とAP-1の活性化を制御する可能性について検討した.RAは,MC3T3-E1細胞のDNA合成を,その濃度依存的に阻害した.しかし, RAば,骨芽細胞分化のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性を強く増加した.また,RAば,骨芽細胞のマーカーで,骨基質成分の一つであるos-teopontmの遺伝子発現を誘導することを確認した.さらに, MC3T3-E1細胞において, RAほ牛胎仔血清(fetalbovine sei; FBS)の刺激によって誘導されるAP-1構成成分であるc-fosとc-junの遺伝子発現を阻害した.Electorophoretic mobility shift assayの結果から, RAば, FBSによって誘導されるAP-1が,その結合配列である12-tetra-decanoyl-phorbo1 13-acetate-responsiveelementへ結合することを強力に抑制した.これらの結果から, RAば, MC3T3-E1細胞の分化を誘導し,さらに,その分化した細胞において,c-fosとc-jun遺伝子発現を阻害することによってAP-1形成を強く抑制することが明らかとなった.