極細径·経皮経肝胆道内視鏡による総胆管結石に対する砕石治療術 - とくにハイリスク高齢者総胆管結石症例に対して-

摘要

高齢者および重度心疾患,呼吸器疾患,腎疾患などのハイリスクな基礎疾患をもつ総胆管結石症例の治療に開腹手術よりも内視鏡を用いたアプローチを選択することが多い。 内視鏡的アプローチには経十二指腸乳頭的,経皮経肝的,経腹腔鏡的な方法があるが,今回,これらのハイリスクな総胆管結石に対し,経皮経肝的に極細径の胆道内視鏡を用いて,電気水圧衝撃波(EHL)による砕石·排石術を行い,有用な治療成績を得た。 過去7年間に経験した70歳以上の高齢者および心筋梗塞や僧帽弁閉鎖不全症などの心疾患,糖尿病,慢性腎不全や肺炎を基礎疾患にもつ総胆管結石63例を対象にした。 主訴として黄疸または発熱を認めた。 方法として63例の中62例に経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD), 1例に経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を行い,そのドレナージ瘻孔を介して経皮経肝胆道内視鏡を施行した。 内視鏡については外径2.8 mm,銀子チャンネル内径1.2mm,先端首振2方向各120度可動の極細径内視鏡を用いた。 胆道内視鏡下砕石術はEHL電極を甜子チャンネルを介して結石に近接して施行した。 また,バスケット甜子による機械的破砕も加えた。 成績については,ドレナージ瘻孔は10Fr.まで拡張すればよく, 2日以内の短期間で胆道内視鏡下砕石術が施行可能であった。 63例全例に総胆管結石の除去に成功した。 結石の大きさは直径最大30mm,最小8mmであったが,とくに径30mmの巨大な結石を砕石·排石できた。 また,基礎疾患の悪化例および死亡例はなく,安全かつ容易に治療できた。 結論として,高齢者および重度心疾患などを基礎疾患にもつハイリスクな総胆管結石症例の治療にEHLを用いた極細径胆道内視鏡による砕石術は有用であった。 径30mmの巨大結石も砕石可能であった。 また,消化管吻合術などによって経十二指腸乳頭的アプローチによる治療が困難である症例にも今回の治療法は良い適応になると考えられた。