先天性表皮水疱症に合併した成人のIgA腎症にステロイド治療が著効した1例

摘要

先天性表皮水疱症は，日常生活で外力の加わる部位 に水疱が反復して生じることを主な臨床症状とする一群の疾患である。先天性表皮水疱症は大きく 4つの型 に分類されており，本報告はこのうち最も重症例とさ れている劣性栄養障害型である。水疱は表皮下にでき， 原因は7型コラーゲン遺伝子の異常によるものと考 えられている。劣性栄養障害型の頻度は約3割を占め ており，手指の癒着などがあり，QOLが著しく障害さ れるうえに繰り返される感染や7れ疱形成などにより年 を経るごとに状態は悪化し，一般的には短命である。 第一に注意する合併症としては有棘細胞癌の発生があ げられるが，腎不全にも留意すべきである。腎不全の 原因としては，続発性ァミロイド一シスや薬剤性など がよく知られている。ひとたび肾不全に陥ると，腎代 替療法の選択治療には困難が伴い，早期の治療が望ま れる。IgA腎症の合併は比較的まれではあるが，ステ ロイドの使用の是非を含め示唆に富む症例と考えられる。