多発肝膿瘍を契機に発見された下部直腸-肛門管癌の1例

摘要

肝膿瘍は発熱，上腹部痛を初発症状とし，時に敗血症にいたる疾患であり，早急な治療および原因検索を要する.感染経路としては 経胆道感染によるものがもっとも多いが，まれに 大腸癌を伴う症例が報告されている.今回われわ れは，多発肝膿瘍を契機に発見された下部直腸-肛門管癌の1例を経験したので，文献的考察を加えて報告する.1力月前より持続する発熱，右季肋部不快感，食欲不振を主訴に近医を受診した.血液 検査で炎症所見の上昇を認め，精査加療目的に当 院に紹介され受診した.腹部超音波検査で多発する低エコー腫瘤を認め，造影CT上肝両葉に多発する肝膿瘍を認めたため同日入院した.身長167cm,体重63.5kg,体温 36.5°C,血圧139/98mmHg,脈拍109回/分，呼 吸回数18回/分であった.結膜に軽度の貧血があ り，黄染はなかった.表在リンパ節腫脹を触知しなかった.