関節リウマチにおけるァダリムマブの効果に対する 前治療のメトトレキサートの治療効果の影響-多施設研究登録システムTBCRより-

摘要

【目的】関節リウマチ（RA)患者において，前治療のメトトレキサート（MTX)の治療経 過が，その後のァダリムマブ（ADA)の治療効果に与える影響を後ろ向きに調査すること。【方法】名古屋大学整形外科.リウマチ科関連施設による多施設研究（TBCR)の登録例の中でバイォナイーブかつMTX併用かつMTX治療開始後1年以内にADAを導入された症 例を研究対象とした。ADA投与24週後にDAS28-CRP<2.3の寛解を達成したR群（16例） と，非寛解達成例と24週未満での中止例を合わせたNR群（20例）に分類し，MTX治療開 始時の患者背景と疾患活動性，MTX治療中の疾患活動性の推移，ADA治療開始時の疾患 活動性を調査し，両群を比較した。【結果】MTX治療開始時ではR群はNR群と比較して有意に圧痛関節数（3.8 vs. 9.2)とDAS28-CRP (4.36 vs. 5.19)が低値だった。MTX治療中ではR群はNR群と比較して有意に CRPの改善値(0.98mg/dL vs.-1.14mg/dL)が大きかった。ADA治療開始時ではR群は NR群と比較してCRP (1.78mg/dL vs. 4.26mg/dL), DAS28-CRP (4.40 vs. 5.23)が低値 だった。MTX治療開始時のDAS28-CRPとMTX治療中のCRP改善値に関してROC解析を 施行すると，AUCはそれぞれ0.750と0.713でありADA投与24週後の寛解達成予測能は良好 だった。各々のカットォフ値は4.73と-0.06mg/dLであった。【結論】ADA治療においてはMTX治療開始時のDAS28-CRPが4.73未満で，MTX治療中 のCRPの悪化がなければADA治療における寛解達成率が高くなる。一方，MTX治療開始 時のDAS28-CRPが4.73以上あるいはMTX治療中にCRPの悪化が見られた場合はADA導入 のみでは不十分である可能性があり，MTXの増量や短期的なステロイドの使用を考慮する 必要がある。