Abscopal effectを認めた小腸NK／T細胞リンパ腫

摘要

Abscopal effectとは，放射線治療で照射野以外の腫瘍が縮小または消失することである。 Abscopal effectにて腫瘍が消失し，完全寛解となった73歳の女性を経験したので報告する。2001年11月12日，突然のイレウスで発症し，緊急手術を行ない小腸NK／T細胞リンパ腫（CD2－，CD3ε+，CD5～，CD7＋，CD20-，CD56＋）と診断した。 著明な腸管壁肥厚や多発横隔膜下腫瘤を認めたが，腹腔外に病変はなくLDHは144IU／l，IPIはhighで病期はⅣであった012月6日よりCHOP療法を施行したが腫癌は増大し，化学療法抵抗性と判断した。 全身状態の悪化により化学療法の追加は困難と思われ，12月14日から骨盤内の主病変のみに放射線照射を開始した。 その後照射野内の腫瘍の著明な縮小に加え照射野外の上腹部腫瘤の消失（abscopal effect）も認めた。 放射線治療終了後に腹腔内の病変は完全に消失した。今後abscopal effectの認識の向上や症例の集積が必要であると思われ報告した。（臨床血液44（9）：940～945，2003）