薬物性腎障害の病理 腎生検所見を中心にした薬物性腎障害の病理像の概説

摘要

腎障害をきたす薬物は数多く知られているが，薬物性腎障害を疑った場合，まず原因と考えられる薬物を中止することが肝要である．これのみで症状の改善が得られるケースもあり，実際に腎生検に至る症例は少ない．しかし，腎障害が遷延する場合や進行性の腎機能低下を認めた場合には，腎生検が行われている．薬物による腎障害の組織像は多種多様であるが，代表的なものとして薬物性虚血や直接毒性による尿細管障害，炎症細胞浸潤を主体とした尿細管間質性腎炎がある．一般に薬物性腎症に特異的な病変は乏しく，組織所見のみから診断することば難しい．特徴的な糸球体障害や血管炎による半月体形成性壊死性糸球体腎炎も起こりうるが，特定の薬物に限られている.また，腎虚血は急性循環障害の病態でもあり，循環不全が合併している場合には薬物が直接の原因であるかの判断が難しいことが多い.したがって，組織所見は臨床経過，検査所見などを総合的に評価するためのひとつの判断材料と考えるのが妥当であろう．今回はその代表的な薬物性腎症の生検所見を中心に概略を解説したい．