北米の研究費評価システムの現場から見たわが国の制度の問題点

摘要

科学技術立国のかけ声の下，わが国の研究費は近年大幅に増加し，2000年度には官民あわせて16兆円ともいわれる．しかし大規模予算に支えられた大型プロジェクトも数多く実施されてきたとはいえ，公的研究費はそのうち3．5兆円程度，基礎研究への支出はその半分と，実際には民間を主とした応用·開発研究がほとんどを占める．また，わが国の一般的研究者に最も広く知られ利用されている文部科学省の科学研究費は，1980年以来，絶対額では5倍以上に増加はしたが，2002年度で1，700億円に止まり，公的研究費の大部分は各省庁の枠の中での透明性の低いもので占められている．こうしたなかで，国際的に高い評価を受ける成果も数多く生みだされたとはいえ，公的研究費のGNPに対する比率は，北米やEU諸国に比べて依然として低く，わが国の科学技術の基盤整備とさらなる発展のためには，いっそうの量的拡充が望まれる．